世界は多分 他者の総和[作文]
2016.09.22 Thu今の私ならば書かない文章、
現在の私では書けない文章。
◉デ☆ビューの田中編集長に「本について何か書きませんか」とお誘いいただいて、この連載ページを始めさせていただけることになりました。しかし本について何か書くといっても私は本を分析することは苦手ですし、膨大な量を読んでいるわけでもありません。「はい、やります!」と元気に答えたものの内心、大丈夫かな…と心配しています(書けなくなったらお悩み相談室又は一問一答コーナーに変わります、きっと)。
読書経験は浅いですが、これまで出会ってきた本にはどんなものがあっただろうかと思い返してみると、胸にふっと浮かんでくる本があります。それは私を勇気づけてくれた本だったり、大切な友人から貰った本だったりと思い出がつまっているものです。本とのエピソードやその本に対する思いなどを交えて小出早織のオススメ本を紹介させていただきたいと思います。今月は茨木のり子さんの『詩のこころを読む』です。
「詩のこころを読む」だなんて、タイトルだけ見るとムズカシイことを仰っているのではないだろうかと身構えてしまいますが、全くそんなことはなく、茨木さんのやわらかな語り口に導かれて素晴らしい詩の世界を堪能することができます。素敵な詩は読んでいるだけで感情が揺れ動き様々なイメージが浮かんでくるので自分の演技のこやしになっています。音読は滑舌練習にもなりますしね。
この本は自ら選び取ったものではなく、尊敬している大学の先生から薦めていただいた本でした。先生は(ごく少人数制の)先生の講義を受けている学生全員に『詩のこころを読む』をプレゼントしてくださいました。「好きな詩を一つ選んで話し合いましょう」と。気に入る詩はみんな違って、どこに心ひかれるかを話し合ったのはとても面白く楽しいひとときでした。デ☆ビュー読者のみなさんが、もしこの本をお読みになってお好きな詩があったら是非教えてくださいね。私は吉野弘さんの「生命は」という詩が大好きです。
◉前回の「小出の本棚」では茨木のり子さんの『詩のこころを読む』を紹介させていただきました。私はデ☆ビュー読者のみなさまに興味を持ってもらいたくて「詩を読むことは演技のこやしになる」だの「滑舌練習になる」だの、役に立つ本ですよという風に紹介した面がありました。しかし役立てることだけがあの本を読む本義ではありません(実際に役立ててもいるので嘘を述べたわけではないのですが)。何故そのようなことを今更言うのかというと、今月号でどんな本を紹介するか(早々に)迷ったからでした。私はデ☆ビュー読者のみなさまに何かしら「役に立つ」ところのある本を紹介し続けていく方がいいのだろうか、と。でもどんな本が役立ててもらえそうかよくわからなくて。「小出の本棚」は今後も有益な情報を発信できそうにありません。あしからず。
原稿を書くにあたって、デ☆ビュー読者の方はどんな方なのだろうと考えることが多くなりました。編集長からは10代の女の子が多いと聞いています。まぁ10代と一括りにしても10歳と19歳ではかなり違いますが、私のことを例に出せば、デ☆ビューを読んでいたのは中学生の時でした。13〜14歳くらい。ということでこのページを13〜14歳の女の子が読んでいてくれると仮定します。今の13〜14歳の女の子はどんな本を読んでいるのでしょう。まず本(雑誌を除く)を読んでいるでしょうか。私は13〜14歳の頃あまり本を読んでいませんでした。沢山の文字を読むのが苦手でした。そういう子、いるかな?でも苦手なんだけど、何か本を読んでみたいという気持ちが少しでもあったとしたら、森達也さんの『いのちの食べかた』をおすすめしたいです。易しい文なので取っ付きやすいと思います。でも書いてあることが軟弱なわけではありません。大切なことです。私はこの本を読んで著者のメッセージを受けとったあと「知ること」や「学ぶこと」に対する意欲が変わったように思います。
『月刊デ☆ビュー』(2015年に休刊)という雑誌で
連載ページを持たせていただいていました。
2009年、21歳の私が書きました。
あの時この時は忽ちまぼろし。
秋分の日、ブログに保存。