幻の宝石[おぼえがき]
2012.06.28 Thu4歳かな5歳かな、
保育園のとき。
園の運動場で遊んでいたら
キラッと光る小さな石を見つけた。
それはエメラルドグリーンの
小さな小さなカケラだった。
「もしかすると、宝石かもしれへん」
胸が高鳴った。
私はティッシュに包んでポケットに入れた。
祖母が常にティッシュを持たせていてくれたことに
初めて感謝した。
外で遊ぶ時間が終わって屋内に戻ると
ティッシュをそっと開いて石を見ようとした。
拾った小さなカケラは消えてしまっていた。
ポケットの中を探っても出てこない。
すごい宝物を見つけたんだから
落とさないように失くさないように
いつも物をすぐ無くすと怒られているけど
こればっかりは、と固く思っていたのに…
泣きたかった。でも
私以外は宝石を見ていないのだから
伝えることも難しい。
あんな丁寧に包んであったのに
なんで消えてしもたんやろ。
今考えるとあれは石なんかではなくて
割れたガラスの小さな破片が砂に混じり
削り削られた末の姿だったのだろう。
けれどあのときは
宝石を見つけてしまったんだと本当に思って
たまらなくドキドキしたのだ。