おでこ[おぼえがき]
2012.02.21 Tue小学校からの親友が東京にやってきた。
横浜へ出張に来ていたので
東京まで足を伸ばしてもらった。
夕飯を食べているとき
「出張に行く前の日、ママがね、
さーちゃんのおばあちゃんの話をしたんよ。
私が転校してきてすぐにあったPTAの懇談会でね
『Nさんが転校してきてから
さおりの目がイキイキするようになりました。
それまでぼやーっとした焦点の合わないような
目をしてたんです。
でもNさんと出会ってから、
何かに強く関心を持ったり、
怒ったり、感情の起伏が感じられるようになりました。
Nさんが転校してきてくれて、
私はとっても感謝しています。
っておばあちゃん言わはったんやって」
親友が私の小学校に転校してきたのは
小学校5年生の時だった。
黒板の前に立ち、名前を言った
11歳の親友の姿を鮮明に覚えている。
前髪を全部上げたポニーテール、
白いおでこ、大きな瞳。
転校生というのは
その言葉の響きだけで魅力的なものだけれど
親友が来るまでにも転校生は何人か来ていた。
でも特別に魅かれたり
仲良くなったりすることはなかった。
けどさー
ばぁちゃんよ。
そんなに私のこと
ちゃんと見てくれてたの。
なめてたよ、心の底では。
なんにもわかってくんない
口うるさいばぁちゃんだと思ってたよ。
たしかにその頃無気力だったような気がする。
家も学校も居心地が良くなかった。
おばあちゃんと親友のママとの間に
そんなやりとりがあったなんて。
その場面を想像すると涙がぽろぽろこぼれてきた。
親友のママはPTAの懇談会で初めて会った
おばあちゃんをすぐ好きになって
私のこともずっと大切にしようと思ってくれたらしい。
「ママがさーちゃんによろしくねって。
京都に帰ってきた時はママにもちょっとでいいから
顔見せてくれると嬉しいよ」
親友とは店を三軒ハシゴした。
お風呂あがり、久しぶりに
前髪を上げて一つにまとめている親友を見た。
白くて綺麗なおでこだった。