オヤスミ[かたっぽなくしたてぶくろ]
2007.08.09 Thuつくえの中にはノートが何冊も入っていて、
その中身はというと日記のような、メモのような、
らくがきのようなものが書かれている。
あるページにはぎっしり、
数ページ空いてポツリと書かれていたりと
書き手はたいへん気まぐれである。
めずらしく熱が出たものだから
ベッドの上に寝転がっていた。
部屋が暑いのか、
自分の体温が上がっているのか
よくわからない。頭が重い。
窓から見える空は気持ちよく晴れている。
外へ遊びに行きたくてたまらない。
眠れない。
ひきだしからノートを一冊手に取り
読んでみた。
目の前にいる1人のひとに対する想いを伝えるために、
くるりとうしろを向いて、
地球を逆に一まわりしてくるほどの
手間をかけねばならないのが、
人間同士のコミュニケーションというものだろう。
愛とか恋とか友情とかの言葉を
口にした途端に消えてしまう何かがある。
その何かをつかむために
言葉を用いなければならないこともある。
言葉を捨てなければならないこともある。
大岡信さんの『青き麦萌ゆ』より
自分がこの文章を書き取ったことなんてまるで忘れていた。
現代文のテキストに載っていた、のだと思う。
私は言葉を捨ててばかりか?
自答してみた。
それより寝てなさい。
はい。